http://mainichi.jp/select/news/20120924k0000m040065000c.html
生活保護費:
「現物給付案」受給者ら危惧 厚労省も難色
衆議院の解散時期が取りざたされる中、総選挙に向けて生活保護費の現物給付を
打ち出す動きが広がりつつある。自民党は食費代わりに食事用回数券の配布を想定
し、現物給付の導入をマニフェスト(政権公約)に盛り込む見通し。橋下徹大阪市長が
代表に就く「日本維新の会」も新党の綱領に現物給付の導入を明記する。受給者の
間には「安心して暮らせなくなるのでは」との不安感が広がり、厚生労働省も
「差別を助長する恐れがある」と難色を示している。【遠藤拓】
生活保護費は「生活」「教育」「住宅」など用途別に給付方法が定められ、緊急時
などを除いて現金を給付する。受給者が金銭を支払う必要のない現物給付は「医療」
と「介護」だけだ。
自民党は先月まとめた政権公約最終案で、自治体が保護費の現物給付と現金給付
を選べる制度の導入に言及。具体的には食券の配布や自治体による家賃の振り込み
を想定している。保護費の1割カットや不正受給への厳格な対処も含めて、公約の
「完成版」に盛り込まれる見通しだ。
同党「生活保護に関するプロジェクトチーム」座長の世耕弘成参院議員は「現物
給付は受給者の心理的なハードルになり、自立を促すことになる。貧困ビジネス減少
にもつながる」と強調する。
地域政党である大阪維新の会は先月末に次期衆院選公約「維新八策」の最終案
を公表。代表の橋下大阪市長はその後、公約ではなく国政新党・日本維新の会の
「綱領」との見方を示したが、そこで「現物支給中心の生活保護費」と明記した。
一方、民主党には現時点で現物給付を主張する動きはない。
こうした状況に、生活保護を受給している東京都内の40代男性は「決められた場所
に毎食、弁当や食材を受け取りに行くのか。安心して暮らせず、就職も難しくなる」と
表情を曇らせた。埼玉県の20代女性受給者も「急な出費に備え食費を切り詰めてやり
くりしてきたが、それもできなくなる」と嘆いた。
ケースワーカーの経験が長い東京都区部の自治体職員は「現物給付をしても年金や
給料をこっそり受け取る不正受給は防げない。受給者にもメリットはない」と言い切る。
厚労省幹部は「食券は転売されれば不正の温床となる。導入にも多大なコストと時間が
かかりそうだ」と述べ、現物給付には否定的だ。
生活保護問題対策全国会議は6月、他団体と共に現物給付などの改革案を批判する
公開質問状を自民党側に提出したが、回答はない。事務局長の小久保哲郎弁護士は
「弱い者をいじめて人気を取ろうとの意図を感じる。本当に必要なのは社会保障の底上げ
では」と疑問を呈する。
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