Mainichi-JP2009年4月20日付けの記事で 群馬・渋川の老人施設全焼:火災1カ月 問いかける「10人の死」という記事がj掲載されました

投稿日時 2009-4-20 20:32:17 | トピック: 報道記事

群馬・渋川の老人施設全焼:火災1カ月 問いかける「10人の死」

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090420ddm041040111000c.html
 群馬県渋川市の老人施設「静養ホームたまゆら」の火災から19日で1カ月を迎えた。10人の犠牲者の多くが、受け入れ施設が少ない東京都内の自治体の生活保護を受けて転居を余儀なくされていた。問題は国会でも取り上げられたが、こうした状況が改善される兆しは見えない。この日、東京都内で開かれた追悼集会で参加者の1人が呼びかけた。「10人の死を無駄にしてはいけない」【立上修】
 ◇高齢者、居場所どこに

 「空き部屋があって品質がある程度保たれた施設なら、都外でものどから手が出るほど欲しいんです。病院にも受け入れてもらえないので」

 火災3カ月前の08年12月初め。墨田区の高橋政幸保護課長はそう言って、「施設」の一つに「たまゆら」の名前を挙げた。同区内の生活保護受給者を近県の施設に転居させざるを得ない事情を説明していた時のことだ。

 「たまゆら」には04年2月以降、墨田区の生活保護受給者15人が転居した。火災後、区議会に出された資料によると、認知症や精神疾患、脳梗塞(こうそく)の後遺症などがある人が11人、残る4人は体が不自由で自立した生活が困難だった。

 こうした人たちの受け入れ先探しについて高橋課長は「とにかく雨露をしのげる所に入れようと、救急車の搬送先を探すのと同じ状況が生じる。最も求められるのが素早い対応力。収容能力、処遇面などで優位な施設に依存せざるを得ない」と説明する。行政が「切り札」として頼る施設は、無届けであろうと対応力のある施設に限られている。

 茨城を中心に有料老人ホームなどを展開する経営者も打ち明ける。「金曜午後に役所から来る電話が怖い。行政は土日休むでしょ。『2日休むとおじいちゃん死んじゃうよ。緊急事態だ』って言われる。車に乗せて施設に入れると、ほかに行き場がないから、そのまま永久入所になっちゃう。でも、向こう(役所)が『助けてくれ』と言うんですから……」。この経営者が営む施設では、入居者の7割以上を生活保護受給者が占めるという。

 群馬県警は業務上過失致死傷容疑を視野に火災の捜査を進めているが、施設の燃え方が激しいうえ入所者の多くが死亡し、目撃証言も限られることから、長期化する見通しだ。

 だが、火災は刑事責任を超えた問題を投げかけている。東京都の担当者は「1人で生活を続けられない高齢者の居場所の問題が解決されない限り、ほかの問題をいくらつついても仕方ない」と言う。3月30日の参院厚生労働委員会で舛添要一厚生労働相はこう述べるにとどまった。「介護の基盤を底上げしないといけない。実態を把握したうえで対応したい」
 ◇新宿で追悼集会

 「たまゆら」火災から1カ月が経過した19日、東京都新宿区高田馬場3の観音寺で、都民約60人による追悼集会が開かれ、故人をしのんだ。

 集会は、ホームレスらの支援活動をするNPO法人自立生活サポートセンター・もやいの稲葉剛代表理事らが呼びかけた。

 参加者全員による焼香後、稲葉代表理事は「高齢者の居場所がない現象は、我々都民の責任でもある。一人一人何ができるか考えてほしい」、僧侶らでつくる寺ネット・サンガの中下大樹代表は「10人の死を無駄にしてはいけない」と呼びかけた。中下代表らは生活困窮者に対し、葬儀費用約20万円を立て替えて法要を行う「葬送支援ネットワーク」(0120・443・997)を始めた。【松谷譲二】


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