Q&A; 「自立支援センター」編……
<1> そもそもここは……
(注)現在では原則的に、各区の福祉事務所で手続きをおこない、「緊急一時保護センター」に入所した人しか、「自立支援センター」に入れない仕組みになっています。「緊急一時保護センター」編をご覧になっていない方はそちらからお進みください。
Q27 「自立支援センター」ってどんなとこ?
A 「自立支援センター」とは、入った人たちの「就労による自立」を目指す施設です。まずそこに住民票をおき(基本的に住民票を置くことを求められます)、そこで寝起きしながら仕事を探し、仕事を見つけたらお金を貯め、お金がたまったらそれを資金にアパートを借り、「自立」した生活をする。それが目的です。
Q28 仕事を斡旋してくれるということ?
A いいえ、仕事の斡旋はしてくれません。自分でハローワーク(職安)に通い、自分で仕事を見つけてこなければなりません。
Q29 いつまでに?
A 「自立支援センター」の入所期間は原則2ヶ月。その間に仕事を見つけてくる約束になっています。
Q30 そんな簡単に仕事は見つかるか?
A 「自立支援センター」に入った仲間のうち、約6割が仕事を見つけています。仕事の職種を見ると、「管理・警備」「建築・土木」「清掃」が一番多く、三つ合わせると仕事に就いた仲間全体の4割を超えます。ほとんどが日給月給または時給の仕事です。東京都は「常雇用が前提」と言っていますが、いわゆる月給仕事に就けている仲間は多くはありません。しかし、そうした仕事も職安ルートで探してくることが条件となっています。
コラム 〜みんなが就いている仕事のデータ〜
特別区人事・厚生事務組合厚生部発行
「平成18年度事業概要」より
「就職者職業の内訳(17年度末現在)」
清掃関係 224人 15.7%
管理・警備 243人 17.0%
飲食・調理 132人 9.2%
建築・土木 141人 9.9%
サービス 84人 5.9%
運送 115人 8.0%
工場・製造 162人 11.3%
その他 330人 23.1%
合計 1431人 100.0%
Q31 別にどんな仕事でもいいんだよね?
A 職種は問われませんが、ハローワーク(職安)を通じて常雇用の仕事を見つけるのが条件となっています。退寮までの期限が近づき、自立資金が不足している場合は、日雇いやアルバイト(アルバイトをする場合は福祉事務所への申請を求められます)などでも例外的に認められることもあるようですが、基本的に常雇用・正社員の仕事を探してくるように言われます。職安紹介の仕事を見つけるのがいいとは思います。
ちなみに、早朝や、夜勤の仕事はOKです。寮には一応門限もありますが、仕事の関係であれば許可されますし、入浴時間外でもシャワーは浴びられます。
Q32 で、仕事が見つかったとして、その後は?
A 仕事でもらった給料はできるだけ全部貯めて、アパートに移るときの資金とするよう勧められます。そのお金でアパートへ移るわけです。
Q33 2ヶ月じゃお金は貯まらないのでは?
A そのために、4ヶ月までの延長が認められています。だいたいこれまでの実績を見る限りでは、2回給料をもらった時点で、そのお金でアパートに移る、というのが慣習のようです。2ヶ月以内に仕事を見つければ、4ヶ月のうちには2回の給料が出るはず、という計算です。
Q34 アパートに移った後の生活費まで貯まるかな?
A アパートに移るときには、家賃だけでなく、礼金・敷金・不動産手数料などがなんやかやとかかりますね。しかも、「自立支援センター」を出た後は、日々の暮らしも自分でなんとかしていかなければならず、生活費も必要です。基本的にアパートに移るための資金は自分で貯めなければなりませんが、その後、アパートへ移る際に必要な経費のうち、約半分(生活保護水準を上限とする)が東京都と23区から支給されます。 それを次の給料までの生活費充てることができるわけです。
その他に鍋や食器などの什器費(家財道具代)や布団代も出ます。
コラム 〜アパート移転を決めた田中さん(仮名)の場合〜
田中さんは、「自立支援センター」に入ったちょうど1ヶ月目の 4月1日に、とある警備会社に仕事が決まりました。月給は手取りで月15万。そして、田中さんの元に2度目の給料が振り込まれたその翌日の6月15日、田中さんは「自立支援センター」を出て、会社の近くのアパートに引っ越すこととなりました。不動産屋から手渡された明細書は以下の通りです。
敷金1ヶ月 50000円 ○
礼金2ヶ月 100000円 ○
6月の日割り家賃15日分 25000円 ○
共益費の日割り分 1000円
7月の前家賃 50000円 ○
共益費 2000円
建物仲介手数料 50000円 ○
火災保険料(2年間) 15000円
合計 293000円
田中さんの手持ちは給料の2ヵ月分で30万円。すべてを不動産契約に使ってしまうと、翌月の給料日までの生活費がなくなってしまいます。そのため、東京都と23区は、田中さんに最初の家賃、礼金、敷金、不動産手数料(右に丸の付いているもの)の半額を支給します。
そのため、田中さんが自分で負担するお金は155000円となり、残りのお金を次の給料が出るまでの生活費に回すことができました。
<2> そうは言ってもいろいろと気になることが……生活保護、住民票、借金など
Q35 給料に手が付けられないなら、日々の暮らしはどうする?
A 「緊急一時保護センター」と違い、「自立支援センター」では日用品代として1日あたり400円が支給されます。支給日は15日と末日の月2回払いです。入った当初は支給日までお金をもらえない寮もありますが、仕事探しに必要なお金(印鑑代など)であれば、前借りできます。
Q36 住民票を移さなきゃならんと聞いたけど?
A ハローワーク(職安)で仕事探しを行う場合には、連絡先(住民票)が必要になるため、緊急一時保護センターと違って、「自立支援センター」では住民票を移動する決まりになっています。つまり、入ったそれぞれの「自立支援センター」のある区の住民となるわけです。
住民票は、住居を失ってから数年を過ぎると 、本籍地に戻る場合もありますが、今はどこでも郵送で手続きを終えられるので、実際に出向く必要はありません。住民票や本籍のある役所の所在地は、生活相談員に確認してもらいましょう。
Q37 そうは言っても、借金があるんだが?
A 借金に関する悩みはよく聞かれるものの一つです。どこからいくら借りたか、いつまで返したか、わからない状態になっている仲間もいますが、借金を整理するための仕組みはそれなりに整っているので、それほど心配する必要はありません。
Q38 仕事探しはどういうふうにする?
A 「自立支援センター」にはハローワークの非常勤職員が職業相談員として月曜日から金曜日まで常駐しています。ハローワークの登録の仕方や使い方はその人に聞きましょう。面接が決まったら、会社までの交通費は支給され、昼飯の時間にかかるようであれば、食事代も支給されます。また、求職活動のためのスーツやネクタイなども寮内で借りることができます。
Q39 仕事でそろえなきゃならない道具とかあるんだけど?
A 「就職支度金」というのが支給されます。上限31000円。必要なものは、これで買い揃えることになります。以前はハローワークで仕事を見つけてきた人に一律で支給されていましたが、現在では、職場でどうしても必要と言われたもの(制服など)がある場合にのみ、必要最低限の額が支給される、ということになっています。
Q40 2ヶ月間で仕事が見つからなかったら、どうなる?
A 今まで入った仲間のうち6割の仲間が仕事を見つけていますが、仕事が回ってこなくなって続かなくなってしまった仲間もたくさんいます。また、以前のように体力がなく、腰痛や高血圧、糖尿病などの持病が悪化する場合もあります。いずれにしろ、今のご時世で、まじめに仕事を探しているのに見つからない、または続かないのはもはや個人の責任ではありません。2ヶ月間で仕事が見つからない場合、または一度仕事に就いたけれどもいろんな理由で辞めて、満期を迎えた場合には、最初に入った区役所の担当と相談をすることになります。そういうときには、堂々と「生活保護を受けたい」と主張しましょう。行政の施設で十分に仕事探しを行い、それでもうまくいかなかったのだから、もはや「就労努力をしていない」ということにはなりません。そして、生活保護の別の施設(更生施設など)やアパートに入り、改めて時間をかけて仕事探しを行いましょう(自立支援センターと違って、短時間のアルバイトやパートの仕事も可能になります。家賃や生活費の不足する分は生活保護費でまかなわれます)。
福祉事務所の担当者と話すときには、「生活保護を希望する」とはっきり意志表示をし、「生活保護申請書」(決められた書式はありません)を提出することが大切です。ああだこうだと話しているうちにうやむやになって「申請書」を提出しなかった場合には、結局生活保護を受ける見込みはなくなるので、文書として「形」になるまでは気を抜かないでください。
「どうやればいいかわからない」「自分ひとりでは不安だ」「家族に連絡されるのでは」という人は、生活保護編 Q54を見てください。
Q41 いったん仕事に就いたんだけど、うまくいかない。転職したいんだけど・・・。
A 入所期間中の転職は基本的に自由です。実際に多くの仲間が転職しています。長続きする見込みのない仕事を無理してやっていても、退所後に行き詰ってしまったら元も子もありませんから、むやみに給料の高いところでなく、人間関係や体力に応じて長く仕事が出来る可能な限り「肌に合った」仕事を探しましょう。ただし、2ヶ月、3ヶ月満期の節目には、必ず仕事をしていることが延長の条件となるので、センターにいる間に転職を考えている人は、その点注意してください。
<3>いよいよ引越し準備。でもどうやって?
Q42 アパート探しは全部自分でしなくちゃいけないの?
A 仕事同様、自分で探すのが原則です。ですが、「自立支援センター」には不動産協会から派遣されている住宅相談員がいますので、情報やアドバイスを受けることができます。仕事先を考えて、住みたい場所や家賃、間取り、風呂の有無などの条件をよく相談してください。生活保護と違って、家賃の上限はありません。自分の給料と相談して、無理のないところで探すほうがあとあと楽になるでしょう。一般には、「家賃は月収の3分の1以下」と言われています。
Q43 退寮する時期は決まってるの?
A 満期は4ヶ月ですが、仕事に行き始めて、2回目の給料をもらう頃がメドになります。とはいえ、仕事の都合や入居契約の進み具合などもあるでしょうから、生活相談員と相談しながら無理のない日を設定しておきましょう。
Q44 連帯保証人になってくれる人がいないんだが?
A 各センター内には営利目的の民間保証人協会の情報も掲示されています。そこに頼んで、お金を支払うことで解決することができます。ただ、お金の余裕がないなどの理由で、民間保証人会社を利用できない仲間もいるかもしれません。本来こうした場合の入居支援は行政が行うべきものではありますが、東京都が具体的な処方策を講じていないため、私たち「もやい」がアパート入居時の連帯保証人の相談にのっています。家族がいない、親類に頼んだが断られてしまったという仲間は、「もやい」に連絡を取ってみてください。
Q45 アパートに入るにしても、家財道具がないんだけど?
A アパートに入る時には、Q33で書いた敷金・礼金等の半額補助の他に、布団代(19800円)、家財道具代(25000円)が支給されます(自費で買い揃えたあと、領収書と引き換えに現金がもらえます)。家財道具はそれで揃えることになります。
Q46 家財道具って何が必要かね?
A もちろん、何を買うかはみなさんの自由ですが、「もやい」では「なにはともあれ、まずは炊飯器」を買うことをお勧めしています。というのは、今までも多くの仲間が、途中で仕事が続かなくなったりして、食うや食わずの困窮状態に陥ってしまっているからです。そういうときでも米と炊飯器があれば、なんとか急場をしのぐことができます。
<4> アパートに移った後でも……
Q47 最近めっきり仕事が回ってこなくなって、生活が苦しい。どうしよう?
A 二つのことがとてもとても重要です。一つは、アパートを出てしまう前に、自分の住んでいる区(市)の福祉事務所に行って相談すること。アパートを出た後では手遅れです。必ずいるうちに一度出向いてみてください。もう一つは、福祉事務所で生活保護の申請をすること。これは高齢者が一生それで生活するための生活保護とは違って、働けるけれども仕事がないというときに、仕事を見つけるまでの間、一時的に受けるための生活保護です。とにかく、仕事がなくなっても諦めないこと。今までも、多くの仲間が失業して生活が立ち行かなくなったときに生活保護に切り替わり、生活を立て直しています。詳しくは「生活保護編」を読んでください。
コラム 〜自立支援事業「卒業生」のその後〜
私たち「もやい」で連帯保証人の提供を受けてアパートに移った「卒業生」のうち5割の方が、何らかの理由で仕事が続かなくなって現在生活保護を受けたりして、なんとか食いつないでいます。
多くの相談を受けながら思うことは、何よりも「みんな生活保護のことを知らない、知らされていない」ということです。生活保護は生活が立ち行かなくなった仲間が頼る最後の「頼みの綱」です。うまくいかなくなった生活を立て直すキッカケをつかむためにも、どうすれば生活保護を受けられるのか、といったことに関する最低限の知識は持っておきたいものです。生活保護は憲法にも記されたみなさんの権利であり、誰に遠慮する必要もないことを絶対に忘れないで下さい。
ちゃんと働いていたのに仕事を失った、そして次の仕事を探す就職活動をしている、そしてその記録を取っている、ということであれば、多くの場合、生活保護は支給されますので、あきらめる必要はまったくありません。
「一人で相談に行ったが相手にされなかった」「絶対無理だと言われた」という場合には、私たちに相談してみてください。「どうせダメ」と思っても一度は相談してみること。何か力になれることがあると思います。
(「もやい」で連帯保証人を提供した 61名のその後。 2003 年 5 月現在)
*グラフ中の「重複」は生活保護受給後にアパート退去した人を指します。また、「その他」は無事に就労を継続している人および無事に就労を継続していると思われる人を指します。
<1> そもそもここは……
(注)現在では原則的に、各区の福祉事務所で手続きをおこない、「緊急一時保護センター」に入所した人しか、「自立支援センター」に入れない仕組みになっています。「緊急一時保護センター」編をご覧になっていない方はそちらからお進みください。
Q27 「自立支援センター」ってどんなとこ?
A 「自立支援センター」とは、入った人たちの「就労による自立」を目指す施設です。まずそこに住民票をおき(基本的に住民票を置くことを求められます)、そこで寝起きしながら仕事を探し、仕事を見つけたらお金を貯め、お金がたまったらそれを資金にアパートを借り、「自立」した生活をする。それが目的です。
Q28 仕事を斡旋してくれるということ?
A いいえ、仕事の斡旋はしてくれません。自分でハローワーク(職安)に通い、自分で仕事を見つけてこなければなりません。
Q29 いつまでに?
A 「自立支援センター」の入所期間は原則2ヶ月。その間に仕事を見つけてくる約束になっています。
Q30 そんな簡単に仕事は見つかるか?
A 「自立支援センター」に入った仲間のうち、約6割が仕事を見つけています。仕事の職種を見ると、「管理・警備」「建築・土木」「清掃」が一番多く、三つ合わせると仕事に就いた仲間全体の4割を超えます。ほとんどが日給月給または時給の仕事です。東京都は「常雇用が前提」と言っていますが、いわゆる月給仕事に就けている仲間は多くはありません。しかし、そうした仕事も職安ルートで探してくることが条件となっています。
コラム 〜みんなが就いている仕事のデータ〜
特別区人事・厚生事務組合厚生部発行
「平成18年度事業概要」より
「就職者職業の内訳(17年度末現在)」
清掃関係 224人 15.7%
管理・警備 243人 17.0%
飲食・調理 132人 9.2%
建築・土木 141人 9.9%
サービス 84人 5.9%
運送 115人 8.0%
工場・製造 162人 11.3%
その他 330人 23.1%
合計 1431人 100.0%
Q31 別にどんな仕事でもいいんだよね?
A 職種は問われませんが、ハローワーク(職安)を通じて常雇用の仕事を見つけるのが条件となっています。退寮までの期限が近づき、自立資金が不足している場合は、日雇いやアルバイト(アルバイトをする場合は福祉事務所への申請を求められます)などでも例外的に認められることもあるようですが、基本的に常雇用・正社員の仕事を探してくるように言われます。職安紹介の仕事を見つけるのがいいとは思います。
ちなみに、早朝や、夜勤の仕事はOKです。寮には一応門限もありますが、仕事の関係であれば許可されますし、入浴時間外でもシャワーは浴びられます。
Q32 で、仕事が見つかったとして、その後は?
A 仕事でもらった給料はできるだけ全部貯めて、アパートに移るときの資金とするよう勧められます。そのお金でアパートへ移るわけです。
Q33 2ヶ月じゃお金は貯まらないのでは?
A そのために、4ヶ月までの延長が認められています。だいたいこれまでの実績を見る限りでは、2回給料をもらった時点で、そのお金でアパートに移る、というのが慣習のようです。2ヶ月以内に仕事を見つければ、4ヶ月のうちには2回の給料が出るはず、という計算です。
Q34 アパートに移った後の生活費まで貯まるかな?
A アパートに移るときには、家賃だけでなく、礼金・敷金・不動産手数料などがなんやかやとかかりますね。しかも、「自立支援センター」を出た後は、日々の暮らしも自分でなんとかしていかなければならず、生活費も必要です。基本的にアパートに移るための資金は自分で貯めなければなりませんが、その後、アパートへ移る際に必要な経費のうち、約半分(生活保護水準を上限とする)が東京都と23区から支給されます。 それを次の給料までの生活費充てることができるわけです。
その他に鍋や食器などの什器費(家財道具代)や布団代も出ます。
コラム 〜アパート移転を決めた田中さん(仮名)の場合〜
田中さんは、「自立支援センター」に入ったちょうど1ヶ月目の 4月1日に、とある警備会社に仕事が決まりました。月給は手取りで月15万。そして、田中さんの元に2度目の給料が振り込まれたその翌日の6月15日、田中さんは「自立支援センター」を出て、会社の近くのアパートに引っ越すこととなりました。不動産屋から手渡された明細書は以下の通りです。
敷金1ヶ月 50000円 ○
礼金2ヶ月 100000円 ○
6月の日割り家賃15日分 25000円 ○
共益費の日割り分 1000円
7月の前家賃 50000円 ○
共益費 2000円
建物仲介手数料 50000円 ○
火災保険料(2年間) 15000円
合計 293000円
田中さんの手持ちは給料の2ヵ月分で30万円。すべてを不動産契約に使ってしまうと、翌月の給料日までの生活費がなくなってしまいます。そのため、東京都と23区は、田中さんに最初の家賃、礼金、敷金、不動産手数料(右に丸の付いているもの)の半額を支給します。
そのため、田中さんが自分で負担するお金は155000円となり、残りのお金を次の給料が出るまでの生活費に回すことができました。
<2> そうは言ってもいろいろと気になることが……生活保護、住民票、借金など
Q35 給料に手が付けられないなら、日々の暮らしはどうする?
A 「緊急一時保護センター」と違い、「自立支援センター」では日用品代として1日あたり400円が支給されます。支給日は15日と末日の月2回払いです。入った当初は支給日までお金をもらえない寮もありますが、仕事探しに必要なお金(印鑑代など)であれば、前借りできます。
Q36 住民票を移さなきゃならんと聞いたけど?
A ハローワーク(職安)で仕事探しを行う場合には、連絡先(住民票)が必要になるため、緊急一時保護センターと違って、「自立支援センター」では住民票を移動する決まりになっています。つまり、入ったそれぞれの「自立支援センター」のある区の住民となるわけです。
住民票は、住居を失ってから数年を過ぎると 、本籍地に戻る場合もありますが、今はどこでも郵送で手続きを終えられるので、実際に出向く必要はありません。住民票や本籍のある役所の所在地は、生活相談員に確認してもらいましょう。
Q37 そうは言っても、借金があるんだが?
A 借金に関する悩みはよく聞かれるものの一つです。どこからいくら借りたか、いつまで返したか、わからない状態になっている仲間もいますが、借金を整理するための仕組みはそれなりに整っているので、それほど心配する必要はありません。
Q38 仕事探しはどういうふうにする?
A 「自立支援センター」にはハローワークの非常勤職員が職業相談員として月曜日から金曜日まで常駐しています。ハローワークの登録の仕方や使い方はその人に聞きましょう。面接が決まったら、会社までの交通費は支給され、昼飯の時間にかかるようであれば、食事代も支給されます。また、求職活動のためのスーツやネクタイなども寮内で借りることができます。
Q39 仕事でそろえなきゃならない道具とかあるんだけど?
A 「就職支度金」というのが支給されます。上限31000円。必要なものは、これで買い揃えることになります。以前はハローワークで仕事を見つけてきた人に一律で支給されていましたが、現在では、職場でどうしても必要と言われたもの(制服など)がある場合にのみ、必要最低限の額が支給される、ということになっています。
Q40 2ヶ月間で仕事が見つからなかったら、どうなる?
A 今まで入った仲間のうち6割の仲間が仕事を見つけていますが、仕事が回ってこなくなって続かなくなってしまった仲間もたくさんいます。また、以前のように体力がなく、腰痛や高血圧、糖尿病などの持病が悪化する場合もあります。いずれにしろ、今のご時世で、まじめに仕事を探しているのに見つからない、または続かないのはもはや個人の責任ではありません。2ヶ月間で仕事が見つからない場合、または一度仕事に就いたけれどもいろんな理由で辞めて、満期を迎えた場合には、最初に入った区役所の担当と相談をすることになります。そういうときには、堂々と「生活保護を受けたい」と主張しましょう。行政の施設で十分に仕事探しを行い、それでもうまくいかなかったのだから、もはや「就労努力をしていない」ということにはなりません。そして、生活保護の別の施設(更生施設など)やアパートに入り、改めて時間をかけて仕事探しを行いましょう(自立支援センターと違って、短時間のアルバイトやパートの仕事も可能になります。家賃や生活費の不足する分は生活保護費でまかなわれます)。
福祉事務所の担当者と話すときには、「生活保護を希望する」とはっきり意志表示をし、「生活保護申請書」(決められた書式はありません)を提出することが大切です。ああだこうだと話しているうちにうやむやになって「申請書」を提出しなかった場合には、結局生活保護を受ける見込みはなくなるので、文書として「形」になるまでは気を抜かないでください。
「どうやればいいかわからない」「自分ひとりでは不安だ」「家族に連絡されるのでは」という人は、生活保護編 Q54を見てください。
Q41 いったん仕事に就いたんだけど、うまくいかない。転職したいんだけど・・・。
A 入所期間中の転職は基本的に自由です。実際に多くの仲間が転職しています。長続きする見込みのない仕事を無理してやっていても、退所後に行き詰ってしまったら元も子もありませんから、むやみに給料の高いところでなく、人間関係や体力に応じて長く仕事が出来る可能な限り「肌に合った」仕事を探しましょう。ただし、2ヶ月、3ヶ月満期の節目には、必ず仕事をしていることが延長の条件となるので、センターにいる間に転職を考えている人は、その点注意してください。
<3>いよいよ引越し準備。でもどうやって?
Q42 アパート探しは全部自分でしなくちゃいけないの?
A 仕事同様、自分で探すのが原則です。ですが、「自立支援センター」には不動産協会から派遣されている住宅相談員がいますので、情報やアドバイスを受けることができます。仕事先を考えて、住みたい場所や家賃、間取り、風呂の有無などの条件をよく相談してください。生活保護と違って、家賃の上限はありません。自分の給料と相談して、無理のないところで探すほうがあとあと楽になるでしょう。一般には、「家賃は月収の3分の1以下」と言われています。
Q43 退寮する時期は決まってるの?
A 満期は4ヶ月ですが、仕事に行き始めて、2回目の給料をもらう頃がメドになります。とはいえ、仕事の都合や入居契約の進み具合などもあるでしょうから、生活相談員と相談しながら無理のない日を設定しておきましょう。
Q44 連帯保証人になってくれる人がいないんだが?
A 各センター内には営利目的の民間保証人協会の情報も掲示されています。そこに頼んで、お金を支払うことで解決することができます。ただ、お金の余裕がないなどの理由で、民間保証人会社を利用できない仲間もいるかもしれません。本来こうした場合の入居支援は行政が行うべきものではありますが、東京都が具体的な処方策を講じていないため、私たち「もやい」がアパート入居時の連帯保証人の相談にのっています。家族がいない、親類に頼んだが断られてしまったという仲間は、「もやい」に連絡を取ってみてください。
Q45 アパートに入るにしても、家財道具がないんだけど?
A アパートに入る時には、Q33で書いた敷金・礼金等の半額補助の他に、布団代(19800円)、家財道具代(25000円)が支給されます(自費で買い揃えたあと、領収書と引き換えに現金がもらえます)。家財道具はそれで揃えることになります。
Q46 家財道具って何が必要かね?
A もちろん、何を買うかはみなさんの自由ですが、「もやい」では「なにはともあれ、まずは炊飯器」を買うことをお勧めしています。というのは、今までも多くの仲間が、途中で仕事が続かなくなったりして、食うや食わずの困窮状態に陥ってしまっているからです。そういうときでも米と炊飯器があれば、なんとか急場をしのぐことができます。
<4> アパートに移った後でも……
Q47 最近めっきり仕事が回ってこなくなって、生活が苦しい。どうしよう?
A 二つのことがとてもとても重要です。一つは、アパートを出てしまう前に、自分の住んでいる区(市)の福祉事務所に行って相談すること。アパートを出た後では手遅れです。必ずいるうちに一度出向いてみてください。もう一つは、福祉事務所で生活保護の申請をすること。これは高齢者が一生それで生活するための生活保護とは違って、働けるけれども仕事がないというときに、仕事を見つけるまでの間、一時的に受けるための生活保護です。とにかく、仕事がなくなっても諦めないこと。今までも、多くの仲間が失業して生活が立ち行かなくなったときに生活保護に切り替わり、生活を立て直しています。詳しくは「生活保護編」を読んでください。
コラム 〜自立支援事業「卒業生」のその後〜
私たち「もやい」で連帯保証人の提供を受けてアパートに移った「卒業生」のうち5割の方が、何らかの理由で仕事が続かなくなって現在生活保護を受けたりして、なんとか食いつないでいます。
多くの相談を受けながら思うことは、何よりも「みんな生活保護のことを知らない、知らされていない」ということです。生活保護は生活が立ち行かなくなった仲間が頼る最後の「頼みの綱」です。うまくいかなくなった生活を立て直すキッカケをつかむためにも、どうすれば生活保護を受けられるのか、といったことに関する最低限の知識は持っておきたいものです。生活保護は憲法にも記されたみなさんの権利であり、誰に遠慮する必要もないことを絶対に忘れないで下さい。
ちゃんと働いていたのに仕事を失った、そして次の仕事を探す就職活動をしている、そしてその記録を取っている、ということであれば、多くの場合、生活保護は支給されますので、あきらめる必要はまったくありません。
「一人で相談に行ったが相手にされなかった」「絶対無理だと言われた」という場合には、私たちに相談してみてください。「どうせダメ」と思っても一度は相談してみること。何か力になれることがあると思います。
(「もやい」で連帯保証人を提供した 61名のその後。 2003 年 5 月現在)
*グラフ中の「重複」は生活保護受給後にアパート退去した人を指します。また、「その他」は無事に就労を継続している人および無事に就労を継続していると思われる人を指します。
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2/8(日) シンポジウム:地球規模と国内の課題に向き合うNGO〜ポスト2015に向けて(2015/01/28)
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2/8(日) シンポジウム『市民が考える若者の住宅問題』(2015/01/24)
2/22(日)・3/1(日) これだけは知っておきたい! 貧困問題 基礎講座(2015/01/23)