失職、即ハウジングプア防げ 支援の全国組織結成へ
http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK200903120080.html
「派遣切り」などで収入の途絶えた労働者が住まいを確保できない「ハウジングプア(住まいの貧困)」が社会問題化していることから、支援団体などが全国組織「住まいの貧困に取り組むネットワーク」を結成することを決めた。14日に東京で設立集会を開く。今後、公的な家賃保証制度の創設や、公共住宅の拡充などを政府に働きかけ、住まいのセーフティーネット確立をめざす。
不況の影響で、派遣労働者らが失職と同時に寮や社宅を退去させられるケースが相次いでいるほか、敷金・礼金なしの「ゼロゼロ物件」などで家賃を滞納した借り主が強引に閉め出される「追い出し屋」被害が多発。その結果、ネットカフェや個室ビデオ店で寝泊まりする低所得者が増大しているとされる。
同ネットワークには、ワーキングプア(働く貧困層)の支援を続けるNPO法人自立生活サポートセンター・もやい(東京)のほか、労働組合や市民団体「反貧困ネットワーク」、弁護士らでつくる「全国追い出し屋対策会議」のメンバーらが参加する。
14日午後2時から、東京都新宿区の大久保地域センターで開かれる設立集会では、派遣労働者や野宿者らが体験談や直面する課題を報告。その後、JR新宿駅東口近くまでデモ行進する。4月19日には電話相談会を開き、被害実態の把握に努めるとともに、失職した借り主らの居住権を侵害する悪質な家賃保証会社に対する法規制のあり方などを検討する考えだ。
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「人間が使い捨てされる時代なのか」。失業して住まいを失い、路上生活を余儀なくされた高齢男性が嘆いた。年度末を迎えて、職と同時に住居まで奪われる「ハウジングプア」は深刻さを増す。全国組織の結成に動いた支援団体の危機感は強い。
26日間働いて、受け取った給与は4万円足らずだった。「こんな扱いを受けたことはない」。2月から生活保護を受けている福岡市博多区の大工の男性(64)は怒りを抑えられない。
昨年10月、スポーツ紙の広告で「職人急募 日給8千〜1万5千円 寮(食事)有」と書かれた建設会社の求人案内を見た。翌日の採用面接。日当、勤務時間などの労働条件や寮費の説明はなかった。
「おかしいと思った。でも、『仕事に就きたい』『家に住みたい』の思いに駆られ、断る選択肢はなかった」。当時の所持金は5千円。その1カ月前、別の建設会社をやめ、廃車で寝泊まりする生活を続けていた。
福岡市内からワゴン車で近県の建設現場に向かった。寮は8畳間で相部屋。テレビもエアコンもなかったが、我慢するしかなかった。会社からは毎日、朝昼兼用の食費として千円が支給された。だが、入社から2カ月たっても、給与は支払われなかった。
12月、手持ちが500円を切り、たまりかねて寮を出た。再び廃車での生活。年明け、弁護士の支援を受けて会社に未払い賃金の支払いを求めた。日給9千円で計算すると23万円余りになるはずが、寮費や光熱費、食費、団体保険料、出張費などの名目で差し引かれ、振り込まれたのは3万7千円だけだった。
男性の代理人弁護士は「ハウジングプアの状態にある労働者の弱みにつけ込んでいる」と会社側を批判。労働基準法違反の疑いが強いとみて、労働審判の申し立てを検討している。
大阪市中央区の女性(54)は昨年夏、夫がリストラされ、収入が途絶えて家賃の支払いが遅れがちになった。玄関ドアに督促状を張られ、2月17日にはドアロックされて閉め出された。現在、提訴の準備を進めている。
こうした「追い出し屋」による被害者は、派遣労働者ら収入が不安定な低所得者に多い。とりわけ、昨秋以降は雇い止めや解雇で家賃滞納者が相次いでいるとされる。
昨年末の「年越し派遣村」を支援したNPO法人自立生活サポートセンター・もやいの稲葉剛・代表理事は「派遣会社は派遣先の、家賃保証会社は家主の側に立ち、利潤追求しか考えずに労働者らの立場を不安定にしている」と指摘。「追い出し屋問題が表面化し、雇用と住まいの問題をリンクさせて支援に乗り出す必要があった」と、「住まいの貧困に取り組むネットワーク」の設立を急いだ理由を説明する。(室矢英樹)
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