毎日新聞 2008年12月4日「2兆円あったら:/下 安定雇用の促進を」派遣切りについての記事が掲載されました
2兆円あったら:/下 安定雇用の促進を
http://mainichi.jp/life/job/news/20081204ddm013100139000c.html?link_id=TT002
賃貸住宅の家賃を滞納した際に違法な手段で退去を迫られたとして、大阪、兵庫両府県の入居者4人が5日、家賃保証会社や家主らに慰謝料など1人あたり約110万〜約140万円を求める訴訟を大阪簡裁に起こした。代理人の弁護士らは「低所得者を狙った『追い出し屋』の営業実態の違法性を追及したい」としている。
◆提案
◇「トライアル雇用」奨励金を拡充
「派遣先が『仕事がない』と言っている」。10月29日、神奈川県内の自動車部品工場で働く派遣社員の男性(33)は派遣会社の担当者から突然、解雇を通告された。契約期間はまだ1カ月残っていたが失業し、寮も出なければならなくなった。
昨年初め、勤務先のパチンコ店が閉店。携帯サイトで仕事を探し、今夏までは別の工場で働いた。「派遣が手っ取り早い」と派遣会社に登録。自動車部品工場でエンジン部品の検査を担当した。9月までは残業も多く月収36万円の時も。それが世界同時不況で一変、仕事は半減した。
両親、兄は既に亡くなっている。個人加盟の労組「首都圏青年ユニオン」に相談し、NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」を紹介された。今は、もやい協力者のアパートに身を寄せる。男性は「派遣はしょせん『人売り』、暇になれば削られる。もうやりたくない」と話すが、新たな仕事の見通しは立っていない。
個人加盟労組が集まる全国ユニオンが11月末に開設した「派遣切りホットライン」には、2日間で472件の相談があり、うち219件が男性のような契約中途解除だった。
総務省の労働力調査によると、「非正規労働者」は07年に1732万人と、97年の1・5倍に膨らんだ。雇用者全体に占める割合は33・5%だ。だが、厚生労働省が「現在の就業形態を選んだ理由」を尋ねた昨年の調査では派遣や契約社員の約3人に1人が「正社員として働ける会社がなかった」と回答。消極的な選択がうかがえる。
12月1日、首相官邸。麻生太郎首相は経済団体幹部との懇談で「ロストジェネレーションと言われる、25〜40歳。そういった世代を正社員にしていただいた場合に補助金を出している」と、常用雇用の促進を求めた。
その一つが「トライアル雇用」の奨励金だ。3カ月の間、試験的に雇用した事業者に、雇用1人当たり月4万円を給付する。事業者はトライアル雇用を踏まえて本採用するかを決められる。07年度は35歳未満で3万6192人が試み、8割以上という高率で常用雇用に移行した。
この12月には雇用対策の一環として、若年向け制度の年齢制限を35歳未満から40歳未満に緩和した。ただ、事業費は首相が吹聴するほど大きくなく、1次補正後で約68億円、7万人分にとどまる。
労働力調査では、07年の40歳未満の非正規雇用は約740万人に上る。うち正社員を望んでいるとみられるのが約3割。この222万人全員をカバーするのに必要な事業費は年2200億円だ。
企業の業績悪化が進み、不況色が強まる中、産業界にはもはや安定雇用のパイは広がらず、政府の雇用促進策には限界があるとの見方が広がっている。
開けつつあった非正規雇用から常用雇用への道は断たれてしまうのだろうか。
トライアル雇用を利用する東京都内の電機部品メーカーの人事担当者は「奨励金が月給の半額あれば、もっと積極的に雇用できる」と語る。社会保障費などの事業主負担も見込み、奨励金を今の3倍の月12万円に拡充してはどうかとの現場の声だ。必要な事業費は年6600億円。2兆円あれば、「全治3年」と首相が言う日本経済再生の日まで、多くの非正規労働者が十分な挑戦の機会を得られる。
【柴田真理子、遠藤和行】
朝日新聞2008年12月05日付けWEB版にて『追い出し屋』についての記事が掲載されています
「追い出し屋で被害」提訴 家賃滞納の入居者4人
http://www.asahi.com/national/update/1205/OSK200812050042.html
賃貸住宅の家賃を滞納した際に違法な手段で退去を迫られたとして、大阪、兵庫両府県の入居者4人が5日、家賃保証会社や家主らに慰謝料など1人あたり約110万〜約140万円を求める訴訟を大阪簡裁に起こした。代理人の弁護士らは「低所得者を狙った『追い出し屋』の営業実態の違法性を追及したい」としている。
支援団体によると、「追い出し屋」と呼ばれる業者の大半は、借り主の連帯保証を請け負う家賃保証会社に多いとされるが、家主や管理会社が直接、退去を迫る例もあるという。東京では入居者らが10月に不動産会社を相手に集団訴訟を起こし、福岡では司法書士らが11月末に電話相談会を開くなど、被害救済の動きが活発になっている。
大阪簡裁に訴えたのは、いずれも派遣労働者の大阪府枚方市の男性(22)と大阪府柏原市の男性(28)▽大阪市城東区の男性(37)▽兵庫県宝塚市の飲食店アルバイト女性(27)。
被告は、家賃保証会社の日本賃貸保証(東京都)▽日本セーフティー(大阪市)▽ソフトニーズ(同)、不動産賃貸会社の木村産業(同)、不動産管理会社(和歌山市)と家主1人。
訴状によると、原告らが入居した賃貸住宅は家賃2万6千〜約10万円。今年に入り、収入が途絶えるなどして家賃を滞納した。その後、被告会社から、玄関の鍵を換えられたり、年利換算で651%の損害金を支払わされたりしたなどと主張。法的手続きを無視して、実力行使で退去を迫った行為は「居住権を侵害し、公序良俗に反する」と訴えている。一方、不動産管理会社と家主については「保証会社に業務を依頼した」とし、共同不法行為に問えるとしている。
被告会社の木村産業は「コメントは出さない」。ほかの4社は「訴状を見ておらず、詳細が分からないのでコメントできない」としている。(室矢英樹、千葉雄高)
朝日新聞 2008年12月4日「私の視点」に「派遣切り」に関する湯浅誠の見解が掲載されました。
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反貧困ネットのその後 週のはじめに考える
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2008113002000072.html
米国発の金融危機は実体経済に波及して世界同時不況です。一過性でなさそうなのが厄介ですが、危機こそ人間が試される時、腰を据えなければ−です。
リストラや企業の惨憺(さんたん)たる中間決算、暗い事件の連続といったニュースのなかで、沈みがちな気分をちょっと明るくさせてくれたのが特定非営利活動法人(NPO法人)「自立生活サポートセンター・もやい」(湯浅誠事務局長)のホームページでした。
十月一日から始まった緊急カンパキャンペーンの中間報告。まだ二カ月に満たないというのに、寄付金総額が「三千四百二十五万二千三百二十四円」に達したというのでした。
万灯も貧者の一灯も
「もやい」はホームレスやネットカフェ難民など生活困窮者の相談や生活支援をしている組織。先月に報じられましたからご記憶の方も多いと思いますが、米国のサブプライムローン不況で大ピンチに立たされてしまいました。年間活動予算の四割の千五百万円ほどの資金を提供してくれていた不動産会社が九月、突如、倒産したからです。
年末を無事越せるのか。関係者をやきもきさせましたが銀行口座や郵便振替口座への振り込みは予想外でした。もやいメンバーの友人や知人、支援者たちのカンパに加えて、「二百万円」「百万円」といった大口は全く見ず知らずの人からの寄付だといいます。
長者の万灯も貧者の一灯もことのほか貴重。ホームページには感謝の言葉とともに「今年度及び来年度については活動継続の目処(めど)が立った」とあります。もっとも、永続的な活動のためにはさらに多くの草の根の支援を仰がなければなりませんが、多額寄付金は湯浅事務局長を励まし勇気づけているようです。
大量離職発生の恐れも
この湯浅さんらの奔走によって昨年十月、貧困問題に取り組む市民団体、労働組合、法律家、学者たちの初めての組織「反貧困ネットワーク」が結成され、十二月には湯浅さんと首都圏青年ユニオンの河添誠書記長共同企画の「反貧困たすけあいネットワーク」が生まれました。こちらはワーキングプアの若者たちの互助組織。社説で「反貧困に希望がみえる」と期待を込めました。
それからほぼ一年、反貧困ネットワークは愛知、岐阜、滋賀にも組織ができて全国に広がっています。政官界への労働者派遣法改正や社会保障費削減方針撤回の働きかけ、貧困問題の存在そのものを世に知らせることも大切な取り組みです。「もやい」への多額寄付は反貧困キャンペーンの社会への着実な浸透の表れでしょう。
しかし、貧困問題の取り組みは転がり落ちる大石を山頂に上げる刑に処せられたギリシャ神話のシジフォスの運命に似たところがあります。すでに全雇用者の三分の一の千七百万人が非正規労働者、年収二百万円以下のワーキングプアは一千万人。そこに世界同時不況の不気味さが加わります。
厚生労働省の調査では、この十月から来年三月の間に全国で三万六十七人の非正規労働者が失業の見通しで、うち愛知が最多の四千百四人、岐阜千九百八十六人と続きます。企業業績悪化−雇用削減−消費冷え込み−の悪循環が懸念され、今後のさらなる大量離職発生が恐れられています。
何とも不可解なのが経済危機の現状を「百年に一度の暴風雨」と表現した当の麻生太郎首相から危機感が伝わってこないことです。二兆円の定額給付金などの景気対策が盛り込まれた第二次補正予算案の今国会提出も見送られました。
世界同時不況の今後は暗いのかもしれません。明るい予測を語る経済専門家もいません。だからといって貧困との戦いをやめるわけにはいかないでしょう。
貧困は国や社会の衰退から生まれる病です。失業保障や生活保護、医療や年金といったセーフティーネットの機能不全や優しさや思いやりを欠いた社会からも生まれてきます。人間が人間らしく生きるためにどんな社会にするのか、政治に何を求めていくのか。危機だからこそ国民の一人ひとりが真剣に考える時でしょう。
一銭の儲けもないけれど
湯浅さんは著書「反貧困」(岩波新書)で、出会った活動家たちに「深甚な敬意」を表します。
「知り合いの活動家、労働組合のほとんどがワーキングプア。『もやい』でも月六十万円の人件費を四、五人で分け合う。膨大な相談をこなしても一銭の儲(もう)けにもならないが、彼、彼女たちの活動が、日本社会の生きづらさをこの程度に押しとどめている」
こんな人たちが支える日本の未来を信じようではないですか
週刊金曜日にて湯浅誠と一橋大学社会学部教授渡辺治氏との対談「戦争と貧困」が掲載されました
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2008年12月号「第2回共生・地域文化大賞 受賞団体決定」
2008年12月号「生活困窮者の不安を緩和 合同墓『結』が完成」
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2008年11月26日付けしんぶん赤旗で「発言 私の選択:もやい理事長 稲葉剛」が掲載されました
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2008年11月17日付け 東京新聞朝刊 「こちら特報部−自立阻む『住』の貧困」
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東京ボランティア・市民活動センター発行『ネットワーク』第297号に「サロン・ド・カフェこもれび」が紹介されました
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読売新聞2008年11月13日付け朝刊けにて「給付金と住居不定に関する記事」が掲載されています
給付金行き渡るのか
職場転々 ネットカフェ難民
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_08111304.cfm
景気対策の目玉として12日、国民1人あたり1万2000円の支給が決まった「定額給付金」。深夜の都心を歩くと、その恩恵を受けられない人たちがいた。多くは、住居を持たず、インターネットカフェを泊まり歩く「ネットカフェ難民」だった。
池袋の繁華街にあるネットカフェ。午後8時、「3年前から住む場所がない」という男性(34)が、店の前でたばこを吸いながら時間をつぶしていた。「10時間1480円」で利用できる夜間割引は始まったばかり。すぐに入ると、冷え込みのきつい早朝6時には店を出なければならないからだ。
収入源は、リース会社のアルバイト。日当は1日1万円で仕事は月12〜15日しかないため、カプセルホテルに泊まるのは週3日で、あとはネットカフェで夜を過ごしている。全財産は携帯電話と着替えを入れたバッグだけで、1人1万2000円の定額給付金では、今の生活から抜け出せるとは思えないが、何日分かの暮らしの糧にはなる。
しかし、住民票は、絶縁状態になっている新潟の実家に残したまま。今回の定額給付金は、住民登録をした住所地に送られてくる引換券を、市区町村の窓口に持参しなければ受け取ることができない。それを知って「受け取るには、新潟に行かなければならない。でも交通費にもならないから、もうあきらめている」。
今は仕事を探しても日雇い派遣などしかない。定額給付金に使う2兆円もの予算があれば、自分のように安定した仕事がない人を救うために使ってほしいと思う。「僕たちは国のセーフティーネット(安全網)からこぼれ落ちているのだろうか」。給付金のニュースを見ても、かえって失望の気持ちが強くなっている。
減税よりも、現金を支給するほうが、納税額が少ない低額所得者への生活対策になるとして決まった定額給付金。それをネットカフェ難民やホームレスにどう支給するのか。総務省「定額給付金実施本部」の担当者は「非常に難しい課題」と語り、せっかくの給付金が生活に苦しむ人に行き渡らない可能性を認める。
「『貧しい人への対策』などと言いつつ、住居を持てない人たちが受け取れないのは矛盾している」。生活困窮者を支援するNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の稲葉剛代表理事(39)は指摘する。
沖縄県出身で派遣会社に登録している男性(53)も9月末から都内のネットカフェで生活している。静岡県内の部品工場から契約を解除され、寮を出なければならなくなった。住民票は、既に引き払った郷里のアパートに置いたままだ。
職場が変わるたび、派遣会社の寮などを転々とする派遣労働者。その多くが住民票を、実家や以前の住まいに置きっぱなしにしている実態がある。
男性は不安そうに語った。「給付金があれば暮らしの足しになるのに、自分には住民票を置くところがなく、引換券も受け取れない。派遣会社から次の仕事の連絡もない」。冬に向かう中、路上生活を覚悟する日々だという。
ネットカフェ難民とは
アパートなどを借りられず、インターネットカフェや漫画喫茶で寝泊まりする人たち。厚生労働省の昨年の調査では推計5400人で、半数は日雇い派遣やパートなど「非正規労働者」とみられる。
(2008年11月13日 読売新聞)
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3/18・25・28 『これで研修・授業・講座ができる! 貧困問題レクチャーマニュアル』完成記念 無料講座(2015/02/24)
2/15(日)2014年度ひと花プロジェクトシンポジウム(2015/01/28)
2/8(日) シンポジウム:地球規模と国内の課題に向き合うNGO〜ポスト2015に向けて(2015/01/28)
2/18(水) 精神障がい者の生活のしづらさ〜その実際と理由を探る〜(2015/01/24)
2/8(日) シンポジウム『市民が考える若者の住宅問題』(2015/01/24)
2/22(日)・3/1(日) これだけは知っておきたい! 貧困問題 基礎講座(2015/01/23)