読売新聞(2012.11.5)に「『社会的企業』の経営苦境」という記事が掲載
カテゴリ : 報道記事 投稿日時: : 2012-11-10 05:50:08 (2375 ヒット)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=67545&from=navlc
「社会的企業」の経営苦境
国や自治体の財政難を背景に、NPO法人などの社会的企業が、
新たな公共サービスの担い手として期待されている。生活困窮者や
若年無業者(ニート)への支援で実績を上げており、雇用の受け皿
としても注目される。しかし、多くが経営難で苦境に立たされている
のが実情で、利用者と共倒れになりかねない状況だ。「支える側を
支える」ための環境整備が求められる。
◆頼みの寄付減る
「あと数年しか活動が持たない」。生活困窮者を支援しているNPO
法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)の稲葉剛代表理事
は危機的な経営状況を明かす。
2001年に設立。生活保護の申請を手伝ったり、アパートを借りる
際の保証人を引き受けたりしてきた。現在、約940世帯の保証人に
なっている。活動資金は寄付が頼り。湯浅誠理事らが「年越し派遣村」
を開設して注目を集めた08年末前後には約1億円集まったが、その
後は先細りだ。支援者だった企業の経営破綻も影響し、10年度は
赤字が約2100万円、11年度は約1800万円に上った。
生活困窮者には、精神疾患など様々な問題を抱える人も多い。
行政の一律的な対応では解決困難で、きめ細かな支援ができる
社会的企業の存在感が高まっている。
「失業後、ネットカフェで暮らしていたが、所持金がなくなり、何日
も食べていない」。同法人には、こうした相談が来所だけで年間に
約900件、電話では約2000件寄せられる。「活動が滞れば、
利用者を直撃しかねない」。稲葉代表理事は頭を抱える。
路上での雑誌販売の仕事を提供してホームレスの自立支援
を行う有限会社「ビッグイシュー日本」(大阪市)も資金繰りが苦し
く、約4000万円の累積赤字を抱える。
福祉分野に限らないが、NPO法人に対する日本政策金融公庫
総合研究所の調査(12年)では、活動上の問題として「事業収入
の確保」(63・2%)や「補助金・助成金の確保」(40・3%)が上位。
社会的企業の多くが「経営は綱渡り」と口をそろえる。
「ワーキングプアを支援している自分がワーキングプア」「結婚や
健康を考えれば、30歳が“定年”」。こんな窮状を訴える若手スタッ
フも多い。経済産業研究所の調査(06年)では、常勤事務スタッフ
の年間平均給与は166万円にとどまる。
◆支援側が「貧困」
収益が上がりにくいのは、利用者に負担を求めにくく、収入が
寄付や行政の補助などに限られることが背景にある。九州地方
の法人幹部は、「利用者には交通費さえ払えない人もいて、負担
を求めるのは無理。一人一人の自宅に出向き、きめ細かな支援
をするには人手もお金もかかり、経営との板挟み」と嘆く。行政
の補助事業でも、不安定な運営を強いられている場合が多い。
「単年度の事業が多く、人材育成などの計画が立たない」「事務所
代が計上できないなど費用が安すぎ、行政の下請け扱い」と、
苦境を訴える声が現場から聞こえる。
「K2インターナショナルジャパン」(横浜市)は、「働く社員が、結婚
でき、子どもも育てられる待遇にしている」という数少ない社会的企業だ。
若者の自立支援を行っている横浜市の株式会社「K2インターナショ
ナルジャパン」は、飲食店などの自主事業を積極的に展開し、活動の
資金源にしている。「社員が家族を養えるような待遇を確保したい」
との考えからだ。しかし、多くの団体では経営管理のノウハウが乏し
く、同様の取り組みが成功している例は少ない。
こうした実態をよそに、社会的企業へのニーズは高まるばかりだ。
鳩山元首相は09年、「新しい公共」の創造を掲げ、福祉分野を
はじめNPO法人などが主体的に公共サービスを担う社会の実現を
目指す考えを示した。
生活困窮者への支援策を議論している厚生労働省の検討会では、
社会的企業が担い手となる案を打ち出した。
こうした流れを受け、厚生労働省が9月に打ち出した困窮者対策
でも、社会的企業による就労機会の提供などが打ち出されている。
若年無業者支援や子育て、教育分野での活動も広がっており、
NPO法人数は、02年の約6500が11年には約4万2000まで増えた。
これに対し、玄田有史・東大教授は「今後もニーズは高まるだろうが、
今のような情熱先行の運営では長続きしない。利用者のためにも、
『支援者支援』に本腰を入れる必要がある」とクギを刺す。
◆融資や経営指導
1990年代から社会的企業が注目を集める海外では、支援の
取り組みが進んでいる。
イギリスでは、公的機関が積極的な融資や専門家による経営指導
などを実施。困窮者の就労・職業訓練の場を提供するなど福祉、
医療分野を中心に5万5000社以上が活動しているという。アメリカ
では、民間支援機関が資金や経営ノウハウを提供し、ホームレス問題
などで実績を上げている。韓国も07年、人件費の補助や税・社会
保険料を減免する仕組みを制度化。障害者支援で活躍している。
日本では11年、NPO法人への寄付を促す制度改正が行われた
が、普及は進まず、実効性のある支援策は乏しい。塚本一郎・明治
大教授は「資金、人材育成、経営ノウハウの面で横断的、継続的に
支援する機関が必要。社会的企業は困難な問題の解決策の選択肢
を広げるだけでなく、新たな雇用の受け皿としても期待される。支える
環境を整えることは、日本の社会・経済の活性化につながる」と話して
いる。(大津和夫)
【社会的企業】
明確な定義はないが、貧困など社会的課題についてビジネス的
手法も用いて解決を目指す団体。NPO、株式会社など形態は様々。
「ソーシャルビジネス」とも呼ばれる。経済産業省の研究会は事業者
数約8000団体、雇用規模約3.2万人と推計している。
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